2026年5月2日土曜日

村井康司『あなたの聴き方を変えるジャズ史』に共感

  前回話題にした村井康司の著書がまことに面白かったので、同氏の別の著書、『あなたの聴き方を変えるジャズ史』(シンコーミュージック・エンタテイメント、2017年)をご近所図書館で借りてきて読んだが、これも実によかった。

著者のジャズ観はオープンで、「これがジャズだ。これしかない!」といった心の狭い、ことは決して言わない。著者はこれからのジャズについて、こう説くのだ――「『伝統芸能としてのジャズ』だけが『本物のジャズ』ではない、[……]既成の『ジャズ』からの自由こそが新たな『ジャズ』をもたらすのだ」(前掲書、277頁)。そして、こうも述べている――「ジャズははその最初からずっと『新しい耳』を持つ音楽家たちによって次のステージへと向かってきた音楽」(同書、278頁)であり、その「耳」とは「古い音楽から、それまで重要だとは思われていなかった、しかし実は重要な何かを聴き取る」(同)ものだと。

 この件を読んだとき、私は思った。「これはジャズに限ったことではなく、西洋芸術音楽でも同じことではないか」と(ちなみに、私が拙著『黄昏の調べ』の最終章で述べたこともこれと同じような考え方だ)。事実、その少し後で著者はこう言うのだ――「歴史に学び、しかし歴史にしばられないこと。[……]『不易流行』を目指すことにしか、ジャズの、いや音楽の、さらには文化の明日はない」(同)と。全く同感である。

 そうした結論に至るまでの同書の論述も実に面白く、そこで取り上げられていて自分が知らない音楽をいろいろ聴いてみたいと強く思った。