今日は林瑛華さんの「スクリャービン ピアノソナタ全曲演奏会 前編」を聴きに大阪の街中に出かけてきた(於:三木楽器 開成館)。林さんは私が現在非常勤で務めている大学での元学生(今から7年前のことだ)。スクリャービンのソナタを主題として修士論文の作成に熱心に取り組んでいたが、当時から「いつかソナタの全曲演奏を!」と目標を掲げており、今や遂にそれを実現しつつあるわけだ(「しつつ」というのは、まだ「後編」が残っているからである)。すばらしいことである。となれば、これは聴き逃せないではないか。
「前編」たる今回演奏されたのは前半に第1と第5、後半に第7,9、10番のソナタである。第1番は演奏会最初に持ってくるには(ピアニストにとっても、そして、聴き手にとっても)あまりにヘヴィーな作品であるが、前編と後編の各会に異なる時期のソナタを収め、時系列に並べるとなれば、そうするしかなかったのだろう。まあ、はじめのうちはいくらか演奏は硬かったが曲が進むにつれて次第に調子が出てきたようだったし、聴く側としても耳が馴染んでいった。続く第5番は以前に別の場所で林さんの演奏を聴いたことがあるのだが、そのときよりも格段に「練れた」ものだった。この難曲を力でねじ伏せるのではなく(そうした演奏が少なくない!)、しなやかに音楽づくりを行っており、その点にとても好感が持てた。
後半は前半よりもさらによかった。林さんの演奏は割とすっきりした軽やかなものだったが、スクリャービンの音楽のある重要な一面をうまくとらえているように思われた。とともに、演奏からは彼の音楽への愛がよく感じられ、それもよい。曲を追う毎に演奏はしなやかさと自由さを増してゆき、最後の第10番はとりわけすてきな演奏だった。
「後編」は半年後のことだが、その間に林さんは音楽づくりをいっそう深めて演奏に臨むに違いない。楽しみである。