所用(仕事に非ず)で東京に夫婦で出かけてきた。一泊二日の濃密かつ有意義な時間だったが、その中に版画家・長谷川潔(1891-1980)の展覧会を観ることも含まれていた(https://panasonic.co.jp/ew/museum/exhibition/26/260711/)。すばらしかった。以前から「気になる」人だったが、時系列で多くの作品に触れたのは今回がはじめてである。
この長谷川もまさに「我が道」をひたすら追究し続けた人だということが展示された作品からはわかる。彼が到達した全く独自の境地はもちろんすばらしいものだったが、そこに到る過程も実に興味深い。長谷川の創作歴それ自体が1つのドラマであり、作品であるように感じられ、まことに見応えのある展覧会だった。
この長谷川の作品にも私は先日のワイエス同様「静けさ」を強く感じた(もちろん、その内実は異なるが)。のみならず、一見「冷たい」画面の中にもどこか飄々としたユーモアのようなものも感じられ、それがまたよかった。ともあれ、本当によい作品に触れることができ、日々を生きる活力を与えられた。ありがたいことである。それがどんなスタイルであれ、どのような内容であれ、また、どの程度であれ、それに触れることによって「元気になれる」ものが私にとってはよい芸術だと言える。そして、人生の残りの時間(がどれだけあるかは正確なところはわからないにしても、この年齢になれば、少なさを感じずにはいられないもの)を思えば、そうした「よい」芸術以外の芸術は自分には不要である。