イヴ・ナットを相変わらず楽しく聴きつつも、その少し年下でやはりフランスのピアニスト、マルセル・メイエ(1897-1957)の演奏・録音にも興味が再燃している。
メイエもやはり(今は亡き)EMIから17枚組のCDボックスが出ており、それなりの量の演奏を聴くことができる。面白いのはその収録作品で、ハイドン、モーツァルトなどの古典派作品はあるもののロマン派作品は皆無。シャブリエ、ドビュッシー、ラヴェルなどの少し前の、そして、プーランクやミヨーなどの同時代のフランスもの、およびストラヴィンスキーなどが収められている一方、ラモー、クープラン、スカルラッティ、J. S. バッハの作品がほぼ8枚分もある。また、当時として珍しいところではロッシーニのピアノ曲なども含まれている。これはやはりメイエが活動した時代の作曲の風潮が少なからず関わっているのだろうが、それにしても何とも潔いものだ(同世代フランスのピアニスト、ロベール・カサドシュは自身も作曲家であり、時代に即した作品を書いてはいるが、ショパンやシューマンなども演奏・録音もそれなりに手がけている。ということはやはり、メイエはかなり意識的に録音のレパートリーを選んでいたことになる)。
そのメイエが奏でるバロック音楽は、もちろん、ロマン派的なものではないが、さりとて潤いに欠けるわけではない。現在聴いても十分に楽しめる、まことにすぐれたものである(し、そこからはいろいろ学べると思う。実例を1つあげておこう:https://www.youtube.com/watch?v=iZOM3mNeCAM&list=PLa1rC97wRkZj2W0xeQwVfgXJOb2WFbPtR)。もちろん、フランスものも見事である。CDは今では入手が難しいようなので、興味のある方はYouTubeでどうぞ。
黛敏郎の《涅槃交響曲》を岩城宏之より前に録音した指揮者、すなわち、ヴィルヘルム・シュヒターのものを手持ちのCDでやはり久しぶりに聴いてみた(1962年録音。管弦楽はNHK交響楽団)。これがなかなかに見事な演奏であり、岩城指揮のものよりもよいとことがいろいろ見つかる(もちろん、岩城指揮の演奏にもよいところはある)。このシュヒターはN響に招かれて同楽団を特訓した指揮者だが、なるほど、かなりの力量の持ち主だったということがこの《涅槃》の録音からはわかる。
