原語の実際の発音とは異なるかたちで外来語として定着してしまい、もはや変えようのない語は少なくない。音楽関連でもいろいろある。たとえば、今年生誕100年の偉大なミュージシャン、Miles Davisの名は「マイルス」と表記されるのが普通だが、最後のsの発音は/z/が正しい。まあ、これはもしかしたら将来、「マイルズ」と表記されるようになる可能性は皆無ではないかもしれない。というのも、彼の名は必ずしも誰もが知っているというわけではないからだ。
が、「ブルース」はどうか。気になって調べところ、やはりこれも本来は「ブルーズ」と発音すべき語だった。が、「ブルース」という語の一般の認知度はおそらく「マイルズ」とは比較にならないほど高いだろうから、今更、いや、これからもずっと「ブルーズ」にするのは無理だと思われる。いや、その必要はあるまい。「ブルース」は日本語の語彙に登録されてしまっているのだから。もちろん、そこには意味の変質と拡張が伴っているが、異文化受容とはそのようなものである。そして、そこが面白いとも言えよう。