昨日はびわ湖ホールで「川口成彦ピアノ・リサイタル」を聴いてきた(https://www.biwako-hall.or.jp/performance/biwa-gogo69)。このところこの若きピアニストの演奏に心惹かれているので、実演の機会を逃さず出かけてきたわけだ。演目は次の通り:
(前半)
グリーディ: ノスタルジア( 『3つの短い小品』より)
ファリャ: 3つの舞曲( 『三角帽子』より)
プーランク: マヌエル・デ・ファリャの主題によるノヴェレッテ
ペドレル: 夜想曲
アルベニス: 港( 『イベリア』第1巻より第2曲)
ファリャ: 4つのスペイン小品
(後半)
ラヴェル: グロテスクなセレナード
ドビュッシー: ビーノの門( 前奏曲集 第2巻 より第3曲)
途絶えたセレナード( 前奏曲集 第1巻 より第9曲)
グラナダの夕暮れ( 『版画』より第2曲)
グラナドス:オリエンタル(『スペイン舞曲集』op. 37より第2曲)
アンダルーサ(同上第5曲)
ファリャ:ベティカ幻想曲
火祭りの踊り( 『恋は魔術師』より)ひま
(アンコール)
ファリャ:讃歌「ドビュッシーの墓のために」
トゥリーナ:サクロ・モンテ(『ジプシー舞曲集 第1集』op. 55より第5曲)
モンポウ:歌と踊り 第8番
ロドリーゴ:春の子守唄
スペイン音楽を好み、かつファリャ作品を愛する私にとってはまことにうれしいプログラム(今年生誕150年のファリャ作品を中心に編まれたもの)であり、川口はエラールの1927年製コンサート・グランドと1864年製のアップライトによって見事に全曲を聴かせきってくれた。
どの曲の演奏もすばらしかった。世の演奏には聴き手に良くも悪くも緊張を強いるものが少なくないが、川口の演奏はそうではなく、こちらも何ら身構えることなく音楽にすっと入っていけて楽しめるものだった。
もっとも聴き応えがあったのはファリャの《ベティカ幻想曲》だ(「ベティカ」は「アンダルシア」の古名)。実演ではなかなか聴けない作品だということだけではなく、まさに「幻想」的な(ファリャ特有の「渋さ」を持った)スペイン音楽絵巻を生き生きと繰り広げてくれたからである(まさに「アンダルシアに憧れて」ならぬ「アンダルシアに魅せられて」だ)。
2台の楽器の弾き分けも実によかった。とりわけ、エラール・アップライトの魅惑の響きは忘れがたい。その楽器によって、たとえばグラナドスの〈オリエンタル〉はこの上なく美しくもどこか悲しく奏でられ、〈讃歌「ドビュッシーの墓[=ドビュッシー追悼]のために〉は何とも切実に――つまり、作曲者がドビュッシーに抱いていたであろう思いがひしひしと伝わってくるような感じがする――響かせられたのだから。
ともあれ、実にすてきなリサイタルだった。一緒に聴いていた妻は今やすっかり川口ファンだが、私もまた。いつかこのすばらしいピアニストが《イベリア》全曲を取り上げてくれる日が来ますように。

