数日前からイヴ・ナット(1890-1956)が弾くベートーヴェンのソナタを聴きなおしている。これがまことにすばらしい(一例:https://www.youtube.com/watch?v=bgaBHoXpXvE&list=RDbgaBHoXpXvE&start_radio=1)。彼はフランスのピアニストだが、多くの同業者とはかなり経路の異なる演奏をする。録音として残されているのはベートーヴェンのソナタ全集、シューマンのピアノ作品集(CD4枚)、ブラームスやシューベルトなど、ドイツ・オーストリア系のものがほとんどであり、いずれも並のネイティヴのピアニストを遙かに凌ぐ見事な演奏である。日本語版ウィキペディアを見ると「指捌きに難のあることが確認できる」などと書かれているが、だからどうしたというのか。彼ほどのベートーヴェンの弾き手はそうざらにいるものではないというのに。
ナットの録音は多くが1950年代、すなわち、晩年になされているのだが、「よくぞやってくれました」と感謝せずにはいられない。その多くはYouTubeで聴けるので、ぜひ、お試しあれ(ナットの没後50年の2006年に15枚組のCDボックスがEMIから出ている。もはや生産中止だが、今でも中古で入手可能だろう。また、このボックスの再利用盤が他社から出ているが、こちらはまだ手に入る。音質はわからないが)。
そのナットの弟子の一人にジャン=ベルナール・ポミエがいるが、彼もまたベートーヴェンのソナタ全集の録音に取り組んでおり、これもなかなかの名演である。が、今日調べてみたら、何としたことか、今年4月に亡くなっていた(1944年8月生まれとのことだから、81歳だったことになる)。ああ、またよきベートーヴェン弾きが一人減ったことだなあ。というわけで、現存、とりわけ若手ピアニストの今後に期待したい。
フランスでは大規模なデモが起こる(ただし、今回は「デモ」から逸脱した「暴動」的な部分もあり、これは全くいただけない)が、次々と問題が起こっているにもかかわらずこの国ではそんなことにはならない。国民性の違いというわけか。となると、日本人が奏でるフランス音楽も(言語の影響以外の面でも)やはりどこかが違うのだろうなあ。