渡辺裕先生の『パロディにもほどがある!――〈替え歌〉文化の日本近代』(春秋社、2026年)を目下、とても楽しく読んでいる。そこで展開されている「論」はもちろん、そのためにあげられている具体例がまことに面白い。とともに、自分がこれまでに出会ってきた種々の替え歌を懐かしく思い起こしている。
その中の1つに、前谷惟光(1917-74。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%89%8D%E8%B0%B7%E6%83%9F%E5%85%89)の名作漫画『ロボット三等兵』に収められていた〈ロボット三等兵の歌〉(という題名だったと記憶しているもの)がある。「歌」といってもそこに記されていたのは歌詞のみであり、〈天に代わりて不義を討つ〉の旋律を用いるよう指示されていた(なお、今回調べたところによると、この曲名は通称で、正式には〈日本陸軍〉が正しいそうだ:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E9%99%B8%E8%BB%8D_(%E8%BB%8D%E6%AD%8C)。私がこの漫画を貸本屋(!)で借りて読んだのは昭和40年代の終わり頃のことであり、当時の私がそんな歌のことは知るはずもない。そこで同居していた父方の祖母に(なぜかそのときは)弟が尋ねたところ、すぐにそれを歌ってくれ、弟もすぐに替え歌の歌詞でそれを歌ってみせた。その結果、この旋律はしかと私の脳裏に刻み込まれたのである。ただし、替え歌の歌詞とともに。
その歌詞のすべてを覚えているわけではないが、たとえば上のリンク先にあげられている楽譜でいえば、「ちゅうゆうむそうのわがへいは/かんこのこえにおくられて」とあるところは「朝の三時に起こされて/大根切る手の冷たさよ」であり、最後の「ちかうこころのいさましさ」は「僕はロボット三等兵」となっていたはずだ。ともあれ、私にとっては件の旋律とともに浮かぶのはこの替え歌の歌詞の方であり、それはもはや変えようがない。この旋律は私にとっては軍歌のものではなく、旧日本軍の不条理を笑いのめした漫画の挿入歌のものとしてこれからもあり続けることになるのだろう。