今年はスクリャービン生誕150年。それにちなむ演奏会もいろいろある(あった)ことだろう。私もその1つを聴いてきた(下の画像を参照)。
この演奏会では後期スクリャービンの交響曲2つを2台ピアノで演奏したわけだが、これがまことに面白かった。
スクリャービンの管弦楽曲にはピアノ的な音形がしばしば現れ、演奏によってはそれをうまく処理できていないものもあるが、そうした箇所をピアノで弾けば、それこそ「水を得た魚」のように生き生きと響くわけだ。もちろん、ピアノの音は一度出せば減衰する一方なので管弦楽の質感やボリュームをそのまま再現するわけにはいかないし、4本の手で同時に処理できる音にも限りがある。にもかかわらず、今回の演奏にはピアノ編曲ゆえの不足をほとんど感じさせられることがなく、スクリャービンの音楽世界に引き込まれたのである。
ちなみに、演奏者の一人、林瑛華さんは3年前に私の授業の受講生だった。 当事からスクリャービンに打ち込んでおり、大学院の修了演奏では後期のソナタを取り上げていたが、音楽に対する理解に加え、「スクリャービン愛」に溢れる演奏に感銘を受けたことを思い出す。そして、その「愛」は今回、第4交響曲の前に弾かれた第5ソナタの演奏でもひしひしと感じることができた。「30歳までにスクリャービンのピアノ・ソナタ[の演奏]をコンプリートすること」という彼女の目標はおそらく達成されることだろうが、その先も自分なりに探求を続けていくにちがいない。