この演奏では現代のピアノの性能上どうしてもぼやけてしまう「対位法」が明瞭に聞こえ(たとえば、上記《幻想曲》)、ヴィーン古典派に対する「エキゾティシズム」が何とも鮮明に浮かび上がる(たとえば、《ハンガリー風ディヴェルティスマン》)。とにかく、音楽がいっそう軽やか、繊細、劇的、刺激的に鳴り響くのだ。いや、実に面白い。音楽のありようはもちろん、現代のピアノによるシューベルト演奏に「創造(想像)的」刺激を大いに与えてくれるという意味でも。
「全集」と銘打たれている以上、続編が出ることになっているのだろうが、とても楽しみだ。