2019年7月18日木曜日

シューベルトの連弾曲というと

 シューベルトの連弾曲というと《幻想曲 ヘ短調》D940など何曲かの名曲が思い浮かぶが、曲種全体としてはピアノ独奏曲や歌曲、そして、室内楽曲に比べて今ひとつ影が薄い――とずっと私は思っていた。が、先日、そうした先入観を見事に覆してくれる演奏に出会う。『シューベルト:フォルテピアノによる4手連弾作品全集:第1巻 エキゾティシズムと対位法』(山名敏之・山名朋子(フォルテピアノ))がそれだ(http://www.kojimarokuon.com/disc/ALCD9192.html)
 この演奏では現代のピアノの性能上どうしてもぼやけてしまう「対位法」が明瞭に聞こえ(たとえば、上記《幻想曲》)、ヴィーン古典派に対する「エキゾティシズム」が何とも鮮明に浮かび上がる(たとえば、《ハンガリー風ディヴェルティスマン》)。とにかく、音楽がいっそう軽やか、繊細、劇的、刺激的に鳴り響くのだ。いや、実に面白い。音楽のありようはもちろん、現代のピアノによるシューベルト演奏に「創造(想像)的」刺激を大いに与えてくれるという意味でも。
 「全集」と銘打たれている以上、続編が出ることになっているのだろうが、とても楽しみだ。