このところ、スクリャービンのピアノ曲を作品番号順に聴いている。あまり夏向きの音楽ではないが、少し前からなぜか「気分はスクリャービン」。今年がこの作曲家の生誕150年だからというわけではない。とにかく、その気になってしまったのだ。
聴いているのは旧ソ連出身のドミトリー・アレクセーエフ(1947-)の『スクリャービン・(作品番号付きの)ピアノ曲全集』(Brilliant)で、これがなかなかよい演奏である。彼はドミトリー・バシュキーロフの弟子だそうで、ということはアレクサンドル・ゴリデンヴェイゼルの孫弟子ということになる。なるほど、確かにアレクセーエフの演奏スタイルは私が日頃愛聴しているソフロニツキーやネイガウス親子らの幻想的なスタイルとは異なっており、はじめは些か違和感を覚えたが、聴き進むうちに「なるほど、こういうやり方もあるのか」と納得させられた。スクリャービンの音楽にはいろいろな面があるが、アレクセーエフの演奏はその構築性を見事にとらえているように私には聞こえた。いや、とにかく面白い。
今日は愛犬セラフィン(愛称「ふいちゃん」。名前は雄っぽいし、外見もそうだったが、かわいいレディーだった)の命日。亡くなって8年になる。犬嫌い、正確に言えば「犬怖い」だった私を「ワンコ大好き」に変えてくれ、世界を広げてくれた恩人、もとい恩犬だ。そんなふいちゃんは今も私の心の中で生きている。