2023年10月2日月曜日

田隅靖子 ピアノ・リサイタル~ピュイグ=ロジェ先生の想い出に~

  珍しくも2日続けて演奏会に(投稿は深夜12時すぎなので日付は2日だが、演奏会は1日のことである)。しかも、奇しくも会場も同じ。たぶん、こんなことはもう二度とあるまい(と思うほどに、私は出不精である)。その演奏会は「田隅靖子 ピアノ・リサイタル~ピュイグロジェ先生の想い出に~」(於:京都コンサートホール、小ホール)。演目は次の通り:

 

フォーレ:ノクターン第1番 作品33-1

フランク:プレリュード、フーガと変奏曲 作品18

サン=サーンス:アレグロ アパショナート 作品70

オネゲル:3つの小品

 

ドビュッシー(カプレ編曲):春のロンド(2台ピアノ)

ラヴェル:ラ ヴァルス(2台ピアノ)

*[共演(第2ピアノ)]大谷正和

 

 当日のプログラムノートによれば、田隅先生は「関西日仏会館で1979年に来日間もないアンリエット・ピュイグ=ロジェ先生のレッスンを初めて受け」、以来、「お宅へレッスンを受けに、10年あまり毎月京都から通っていた」とのこと(レッスンで取り上げられた曲の中にはデュカスのソナタもあったとのことだが、これは是非聴いてみたかった!)。さぞかし密度の濃い時間であったことだろう。その師の「想い出」に寄せる演奏会ということで、演目にはフランスものが並ぶわけだが、例によって田隅先生ならではの「月並みではない」選曲である。

 前半の独奏曲はいずれも一見淡々とした表現の中にも、はっとさせられる瞬間がしばしばあった。演奏の随所に小さな綻びはあったものの、そのことで音楽の内的持続は微塵も妨げられない。とりわけ味わい深かったのがフランク作品。プログラムノートでは終わりの変奏曲の部分が「天からの賜物のような」と形容さているが、この日の演奏にもその趣きがあった。また、オネゲル作品は今回初めて聴いたが、これも実に面白い。

 後半は2台ピアノ。ラヴェルの《ラ・ヴァルス》は今や定番中の定番だが、それでも実演で聴く(観る)と楽しい。だが、それ以上に魅力的だったのがドビュッシー〈春のロンド〉だ。これまで自宅でCDの録音を聴いていたときにはこのピアノ編曲にはどこか物足りないものを感じていたのだが、実演で豊かな色彩と躍動感溢れる音楽に触れるとそうした不満は吹き飛び、まことに幸せな気分になった。

 というわけで、素敵な演奏を聴かせてくださった田隅先生(そして、大谷さん)、どうもありがとうございました。