2026年4月12日日曜日

『ショパン:忘れられた響きの発見――楽譜が示す57%ペダルなしの音楽を1841年製プレイエルで!』

  ピアニストでピリオド楽器の名手、山名敏之さんから新作CDをいただいた。それは 『ショパン:忘れられた響きの発見――楽譜が示す57%ペダルなしの音楽を1841年製プレイエルで!』と題したものである:https://kojimarokuon.com/products/alm-9289。これまでにもハイドンやシューベルト(連弾曲)でまことに刺激的なCDを出してこられた方だけに、今回のショパン盤の登場はうれしい驚きだ。

 だが、真の驚きは実際に聴いてみたのちに訪れる。すなわち、「楽譜が示す57%ペダルなしの音楽」(その詳しい説明は上記リンク先を参照)は、これまで自分が「ショパンの響き」だと思っていたものとは大きく異なっていたからだ。のみならず、そこに大きな説得力を覚えたからだ。

例えば前奏曲集作品28の第4番。よくある演奏ではペダルによって和音の推移が滑らかに繋がれるわけだが、それがまさに音楽をぼやかしていたことに気づかされる。また、第8番中間部での「ペダルなし」にも最初は仰天させられたが、よく聴くとペダルありの部分との対比が実によく利いており、音楽がいっそう劇的に感じられた。他の曲でも大なり小なりこうした驚きと発見があり、興奮しながら全編を聴き終えた(だけではなく、さらに2回繰り返し聴いた)。

もちろん、この山名さんのような流儀が本当に正しくて、現在の主流の奏法が誤っているということなのではない。後者にも後者なりの理(例えば往時と現在の楽器の違いや演奏する場の違い)があり、それが今現在少なからぬ演奏者や聴き手を惹きつけているという事実は決して軽視できない。が、山名さんの試みがショパン作品に新たな光を当ててくれたのは確かであり(のみならず、主流派の奏法が将来改革される種を蒔いたかもしれない)、1人の聴き手、そして、ショパン音楽愛好家としてそのことを喜ばずにはいられない。とともに、その試みがさらに理論と実践の両面で展開されることを期待したい。

ともあれ、この『ショパン:忘れられた響きの発見』はとりわけショパン・ファン、そして、ロマン派ピアノ音楽ファンには強くお薦めしたい1枚である。