田中勝則『中村とうよう 音楽評論家の時代』(二見書房、2017年)をご近所図書館から借りてきて読んだ。ポピュラー音楽の評論家として一時代を築き上げた中村とうよう(1932-2011)の評伝である。その名はいろいろなところで目にしてきたけれどもその仕事ぶりは知らなかったので、同書を図書館で見つけたとき、「いつか読まねば!」と思っていたのである。
著者はとうよう氏と親しかった人であり、文の随所に氏への愛情がにじみ出ているが、同時に描く対象から適度に距離を置いている。のみならず、「音楽評論、あるいはポピュラー音楽研究なんていうことをやってゆこうと思ったときに、中村とうようという音楽評論家が残したことがひとつの大きな壁として存在しつづけることは間違いない」(前掲書、576頁)と氏の足跡を讃えながらも、「とうようさんという存在は、超えてこそ意味があるのだ。[……]中村とうようは、ぼくたちにとって『永遠のライヴァル』なのである。それがこの評伝の結論だ」(同)と言い切るのだ。何とも清々しい言葉であり、とうよう氏への最高の讃辞であろう。
なお、同書「昭和ポピュラー音楽史」の一断面としてまことに面白い。こうしたものを読むと、そこで取り上げられている音楽をいろいろ聴きたくなってしまうので困る。時間は有限だからだ。が、それでも……。