ジェフ・ベックが亡くなった。数日前、「現代音楽」の作曲家、松平頼暁逝去の報を目にしたときには「へえ、そうなのか」以上の感慨は浮かばなかったが(ちなみに、氏の父、松平頼則は偉大な作曲家だと思うが、その子息の作品に私が「音楽」を感じることはあまりなかった)、それに比べればベックの死は私にとっては格段にニューズ・ヴァリューがある。
実のところ、私はベックの音楽をほとんど知らない。ごく限られたものしか聴いたことがないのだ。それにもかかわらず、その「ごく限られたもの」だけで彼は私にとっては「偉大なミュージシャン」なのである。
たとえば、次の曲のパフォーマンスなどどうだろうか:https://www.youtube.com/watch?v=jP-bT8FCiOo。何ともカッコいいではないか。この〈蒼き風〉はアルバム『ワイアード』(1976) B面最初の曲であり、はじめて聴いたとき(1980年代はじめ)にたちまち魅せられてしまった。その演奏(https://www.youtube.com/watch?v=BupklOQ4Fc0)の26 秒めに何ともカッコいいパッセージがあるのだが、当時から「いったいこれはどうやって弾いているのだろう?」と不思議に思っていた。これはスタジオ録音だが、ライヴでの演奏ではその箇所がキーボードで弾かれていたので、「よほど難しいに違いない」と思い、ますますベックへの尊敬の念が高まったものである(なお、今日、その種明かしと覚しき動画を見つけた。「ははあ、なるほど」である。いや、面白い。やはり26秒めに注目されたい:https://www.youtube.com/watch?v=VJeNhl-VKmA&list=RDVJeNhl-VKmA&start_radio=1&t=24s)。
ともあれ、この希代のミュージシャンに哀悼の意を表したい。