2025年11月24日月曜日

別宮貞雄の名著『音楽の不思議』

  私は別宮貞雄(1922-2012)を「作曲家」としてよりもむしろ「文筆家」として高く評価している。作曲家としてもそれなりの存在だとは思うが、それ以上に私が深い感銘を受けるのは彼の著作からだからだ。

 音楽之友社からは3冊の著作が上梓されていたが、中でも『音楽の不思議』に収められた音楽論はいまだ何ら輝きを失っていない。そこでは音楽というもののありようについて(当然、すべてではないにしても)まことに明快かつ平易に説かれている(私はそのすべてを受け入れているわけではないが、多くの部分に納得している)。それゆえ、音楽愛好家はもちろん、音楽を専門に学ぶ若者にも強く一読をお勧めしたい。

 そこで、現在それらの出版状況を調べてみたところ、音楽之友社のものはすべて版が途絶えている。残念なことだ。親族の手で3巻の著作集が編まれており、そこには音楽之友社刊のうち2点が収められているのだが、何としたことか『音楽の不思議』が抜けているではないか。これは残念。というわけで、同書に興味をお持ちの方は古書店か図書館でどうぞ(なお、『著作集』にしたところで、現在品切れだという。その第3巻は単行本未収録の文章を集めたものだというから読是非ともんでみたいものだが)。