2026年4月16日木曜日

作曲家のDukasは「デュカ(ー)ス」と表記するのが正しいとはいえ

  Paul Dukasの姓を日本語表記する場合「デュカ(ー)ス」が正しい(種々の辞典・事典を見ればそのことはすぐにわかる)。が、しばしば「デュカ」も見かける。先日もドビュッシー関連の本を読んでいたら「デュカ」に出くわしたところだ。また、フランス帰りの人でさえ「現地の人がそう発音していたのだから『デュカ』が正しい」と宣う。

なるほど、フランス語の発音の原則からすれば、最後のsを発音しないのが普通だ。が、固有名詞の読み方には例外がいくらでもある。そして、それを「現地の人」が知らない場合もあろう(日本の場合で考えてみられたい。そうした例は枚挙に暇がないはずだ)。事実、デュカス本人がそのことを嘆いている。曰く、「hélasを『エラ』と発音しますか? しないでしょう! なのに、私の名はなぜ……」(これはエネスクの回想録の一節。手元に現物がないので正確な引用ではない)。同胞にさえ正しく自分の姓を呼んでもらえないことが多々あったのだろう。お気の毒様。

 とはいえ、外国語の日本語表記には必ずしも原語の発音の実態に即していないものが少なからずあり、それが「日本語」として定着している。実際に手持ちの『小学館 ロベール 仏和大辞典』を繰ってみると、Dukasの項には[dykɑːs]という発音が示されていながらも、語義には「デュカ、デュカス(1865-1935):作曲家」と記されている。すなわち、日本での異なる表記の仕方を受け入れているわけだ(そもそも、その発音記号を正確に反映させるならば、「デュカース」とならねばならないのに、そうはしていない。ちなみに、他のものを調べてみると発音記号中の延ばす音を示す補助記号[ː]はなかったり、()で示されていたりする)。それゆえ、「デュカ」という表記にいちいち目くじらを立てる必要はないのかもしれない。

 ……が、私個人としては、音に関わる音楽関係の固有名表記についてはもう少し何とかして欲しいと思っている(この点については以前も話題にしたことがある:https://draft.blogger.com/blog/post/edit/8370436117668253788/2310196875849302726)。

  ちなみに、昔は学校の教科書では「バイオリン」「ベートーベン」などと表記されたものだが、最新の学習指導要領を見ると幸いにもそれは改められていた。新聞などでも私が知る限りでは「バイオリン」だったが、今はどうなのだろうか。購読を止めて久しく、現状を知らないので、そのうちご近所図書館で確認してみたい。

 

 ショパン作品のペダル記号をきちんと見直してみると、確かに自分が思っていたよりも使用が格段に少ない(たとえば、いわゆる「革命」エチュードには一箇所も用いられていない!)。驚きである。もちろん、だからといって、楽譜に記されたペダル記号をいついかなるときでも厳守すべきだとまでは私は思わない。が、オリジナルの記号が示す音楽のありようにきちんと目と耳を向け、それを現代のピアノ演奏でどう活かすかを探ってみることは(ピアノ学生を含む)これからの「ショパン弾き」には欠かせまい。