2026年5月19日火曜日

メモ(156)

  音楽の演奏も一種の「語り」である以上、その語り口、レトリックの巧拙は聴き手の受け取り方に違いをもたらすことになろう。

 ある楽曲が聴き手にとって既知のものである場合、その新たな演奏に対して聴き手は「こうあって欲しい」という聴き方をすでに持っていることが多い。そして、その期待が大きく裏切られることに対して不寛容であることもまた……。だが、レトリックが巧みならば、自分の好みとは大きく異なる演奏であっても、聴き手は説得され、魅了されることもあろう。

 その都度一回限りの演奏行為において、レトリックというものの重要性がもっと考えられ、探られてもよいと思う(まあ、「名人」と喚ばれる人たちはそうしたレトリックをそれと意識せずに実践しているのだろうが……)。