2020年9月27日日曜日

《彼岸花の幻想》

  この季節に突如として現れて、忽然と姿を消す彼岸花。何とも不思議な花であり、子供の頃は不気味さを覚えていたものだが、あるときからその出現を毎年心待ちするようになった。

 その彼岸花をモチーフにした名曲が八村義夫(1938-85)の《彼岸花の幻想》(1969)だ(https://www.youtube.com/watch?v=unLdShaqBtM)。いかにもこの作曲家らしい表現主義的でありながら耽美的でもあるまさに「幻想」的な音楽である。およそ半世紀前の作品だが、今日でもそれなりに弾かれているようだ。

 面白いことにこの曲が収められているのは『こどものための現代ピアノ曲集』(編集・桐朋学園子供のための音楽教室、春秋社、1969年)という曲集であり(私の手元にあるものは1984年の第6刷で、「1985.11.5」と購入日が書き込まれていた)、ということはつまり、元々は「こどものために」書かれた作品だということだ。が、どう見ても「こども」向けの内容ではない(もちろん、こどもが弾いて悪いというわけではないが……)。

 この《彼岸花の幻想》に限らず、八村作品にはどれも「自分の身を削って書いた」ようなところがある。彼の早世は惜しんでも余りあるが、そうした作品を書く人が長生きできたとも思えない。また、遺された作品が人々に愛でられているうちは、彼はまだ「生きている」のだとも言えよう。ともあれ、私も八村作品をこれからも愛で続けたい。

2020年9月26日土曜日

メモ(16)

  音楽はなかなかに取り扱いの難しい薬のようなもの。自分の心の状態に応じて演奏したり聴いたりする曲を選ぶ必要があるかもしれない。たとえば、悲しみや絶望の淵に落ち込んでいるときに寄り添ってくれるような音楽はあるが、あまりにそれに頼りすぎると、いつまでもその「淵」から抜け出せなくなってしまう(どころか、いっそうの深みへと弾き手・聴き手が引きずり込まれることも……)。

 

 先日話題にした「ハイブリッド電子ピアノ」だが、実質的に同類のものがすでにあったことを知らなかった(恥)。なるほど、これは確かに「電子オルガン」のピアノ版である: https://www.youtube.com/watch?v=w4RaOKEKtS4)。

 ただ、この動画を見ていると、ポピュラー音楽での使用に的を絞っているようで、その点はもったいないと思う。クラシック音楽(「現代音楽」も含む)にもそれなりに使えるように思われるからだ。もちろん、実際にそのように使ってみれば、まだいろいろと改良点が見つかるだろうが、少なくとも私は大いに興味を覚える。

 

2020年9月25日金曜日

シラスの《マルヴィーナ》

  「癒やし」という言葉はあまり好きではないが、確かに心身ともに疲れたときにはそうしたものが欲しくなることはある。そして、たとえば次のような音楽が聴きたくなる:https://www.youtube.com/watch?v=cgP0PJ749ww)。これはオランダに生まれ、パリで学び、そののち英国で活躍した作曲家エドゥアール・シラス(1827-1909)の《マルヴィーナ――ロマンス――》作品75(1870 もしくは71)というピアノ曲だ。昔々、初めて(例によって中村(金澤)攝さんの生演奏で)聴いたとき、即座に魅せられてしまった。こうした「小品」の魅力というのはちょっと言葉にしにくい。無理に言葉にしようとすると、どこか嘘くさくなってしまう。それゆえ、とにかく聴くか、あるいは弾いてみて「味わう」しかないのだ。