ヴァレンティン・シルヴェストロフ(1937-)の《Post scriptum》(1990)(https://www.youtube.com/watch?v=92KkpN-o-TI&list=RD92KkpN-o-TI&start_radio=1)を初めて聴いたとき、「これはすばらしい」と思った。そして、今でもそれは変わらない。一歩誤れば甘美なムード音楽になりかねないぎりぎりのところで踏みとどまり、何か切実なものを必死に伝えようとしているこの作品には感動を覚えずにはいられない。
が、そんな作品を産み出した作曲家のその後には些か唖然とさせられる。たとえば、次のものなどどうだろう:https://www.youtube.com/watch?v=bhvh0oNE0Ws&list=RDbhvh0oNE0Ws&start_radio=1。そこにはかつての緊張はなく、あるのは甘さのみ。しかも、楽譜の指示は異様に細かく、弾き手を縛り付けること夥しい。これでは20世紀前衛音楽の譜面と本質的に同じではないか。もし、これがもっと普通に記譜されていたのならば、「まあ、こんな音楽があっても悪くはないかなあ」と思うところだが、これではどうしようもない。では、別の作品ではどうだろうか:https://www.youtube.com/watch?v=HbW-U0krHk0&list=RDHbW-U0krHk0&start_radio=1。私にはこれも大差ないようにしか見えない(し、聞こえない)。
少し前にたまたま大学図書館で最初にリンク先をあげた作品の楽譜が目に留まったので、それを機会にシルヴェストロフの作品を見(聴き)なおしてみたのだが、かように残念な結果に終わった(もちろん、こうした彼の音楽を好む人はいるだろうし、それはそれでけっこうなことだとは思う)。