2025年7月8日火曜日

坂本龍一の習作の行方

  坂本龍一が大学受験まで学んだ「松本作曲教室」では定期的に門下生の作品発表会を行っていた。のみならず、出品作品をすべて印刷して冊子にまとめていた。当然、その中には坂本少年の作品も収められている。

 件の冊子はあくまでも私家版であり、公的には出回っていない。大量の在庫が松本民之助亡き後も当人の作品集や著書とともに保管されていたのだが、住居を処分する際に遺族がすべて裁断処分してしまった(と、当事者の松本清先生からうかがった)。それゆえ、坂本龍一が少年時代にどのような曲を書いていたかは知りようがない。それは習作にすぎなかっただろうが、学生時代の作品から推し量れば、かなりの高水準の習作だったであろうと思われる。

もっとも、坂本本人はそうした習作を他人に見られたくはなかったようだ。亡くなる少し前にその返却を清先生に頼んだというが(このことは以前、このブログで話題にした)、さもありなん。まあ、松本作曲教室の「作品集」を今でも保存している門下生はいるかもしれないから、探し出せば坂本少年の作品を見ることはできるかもしれない。が、そんな野暮なことはしない方がよかろう(こう言うと、「そう思うならば、そもそもこのようなことを話題にすべきではない」とつっこまれるかもしれない。が、坂本の習作に対する好奇心が自分にあることは否定できない)。