エマニュエル・シャブリエ(1841-94 )の音楽を聴くとき、しばしばアンリ・ルソー(1844-1910)の絵が思い起こされる。両者は同時代のフランス人にして独学者、そして、ともに公務員として長く働いたのちに芸術家としてのキャリアを始めているなど、いろいろ共通点があるが、何よりも作品にどこか似たトーンを私は感じる。彼らの曲や絵は素朴で大胆、さりとて洗練を全く欠いているわけでもない。そして、不思議な味わいとユーモアがある。
そのシャブリエの代表作《絵画的小品集》(1881)を実演で聴きたいとずっと思っているのだが、なかなかその機会にめぐまれない(もちろん、録音では繰り返し楽しんできた。たとえば、つぎのものなど:https://www.youtube.com/watch?v=4JEjDBQuzVA)。ラヴェルはうんざりするほど弾かれているのに、彼に少なからぬ影響を与えたシャブリエはといえば……。
ところで、Youtubeを検索してみると、その《絵画的小品集》の第10曲〈スケルツォ=ヴァルス〉の動画、それも子供の弾いたものがやたらに目に付く。どうやら斯界ではこの曲は定番であるようだ。大いにけっこうなことだと思う(この曲だけではなく、他の9曲も取り上げられれば、なおのことよかろう。それらはまことに楽しい音楽なのだから)。が、それらを先に挙げたフランス人メイエの演奏と比べてみると、言語に由来するリズムとイントネーションの違いを感じさせられる。