音を聴くことでも、楽譜を読むことでもわからないことや気づくことが実際の演奏行為の中にはある。などというと大げさだが、私ごときのど素人かつ下手なピアノでも、日々練習していると、「ああ、なるほど」と思うことが少なくない。むしろ、ささいなパッセージでも下手で何度もつっかえるがために何度も繰り返すはめになるからこそ、それだけ気づきも増えようというもの。
ショパンの「革命」エチュードをいつも用いている版と違ったもので練習していたとき、「おやっ」と思う箇所があった。それは第17小節の右手第4拍にある16分音符で、普段使っているウィーン原典版ではes-c-esの和音なのだが、他の版ではそれはcのオクターヴなのだ。そして、どの版にもこの違いについての言及がない。ということは、ウィーン原典版がたんにミスをしているだけなのだろうか(ちなみに、この版が底本にしているフランスでの初版譜でもcのオクターヴになっている)。