2023年8月6日日曜日

佐藤允彦『すっかり丸くおなりになって…』

  佐藤允彦のエッセイ集『すっかり丸くおなりになって…』(メーザー・ハウス、1997年)を読んでいるが、著者の文章はその音楽同様、まことにシャープ、かつ、味わいがある。

 同書に収められているのは『ジャズ・ライフ』誌に連載にされたコラムのうち1986~1996年に書かれたものだ。時事ネタが少なくないにもかかわらず、今読んでもドキリとさせられる意見や指摘に満ちている。たとえば、著者は19897月に掲載された文章の中でこう言う――「ジャズの種子をアメリカからもらって日本に播いてしまった我々は、ここでもうそろそろ彼らとは別の道を歩かねばならない時期に来ているのだろう」(同書、172頁)。今から30年以上前の話であるが、この「ジャズ」を「西洋芸術音楽」に、「アメリカ」を「西洋」に置き換えても現在、十分に考慮に値する意見であろう(言うまでもないが、これは怪しげなナショナリズムとは全く関係がない)。

 著者は1941年生まれだとのことだから、今年で82歳になる。が、まだ現役のミュージシャンとして活動しているようなので、是非ともその生のプレイに触れてみたいものだ。