2024年1月31日水曜日

以前

  以前、坂本龍一が松本清先生のところに習作の返却を求める電話をかけてきたことを話題にした(https://kenmusica.blogspot.com/2023/05/blog-post_26.html)。その際、坂本は「お父さまとお兄さまにはたいへんお世話になりました」と言ったとのことだ。このことを清先生から昨日Google Meetによる会話の中でうかがい、「さもありなん」と私は思った。というのも、坂本龍一が「世界のSakamoto」たり得たのは、1つには優れた「職人芸」があってのことであり、その土台が築かれたのは松本作曲教室だったに違いないからだ(ちなみに、彼は作曲教室で課された宿題は実にきちんとこなし、作品発表会にも真面目に参加したという)。

 とはいえ、坂本はそのことを公の場ではあまり認めていない。彼が生前にものした文章をあれこれ読んでみると、松本民之助については否定的に語られたものばかりが目に付く。もちろん、師匠に批判されるべき点がなかったわけではあるまい。が、それにしても……である。

 では、そんな坂本が上記のように語っているのはどういうわけか? おそらく、己の死を目前にして、もはや「ええかっこしい」の必要もなくなり、素直にそう思ったことを言葉にしたのであろう(これについては清先生も同意見)。だとすると、なかなかに感動的なことである。