2025年8月15日金曜日

マーラーの第9交響曲のすばらしいピアノ独奏版

  昨晩、たまたま次のものを見つけた:https://www.youtube.com/watch?v=RscXoTm75n8&list=RDRscXoTm75n8&start_radio=1。マーラーの第9交響曲のピアノ独奏版である。これがまことにすばらしい編曲なのだ。

まず、原曲のかなり複雑なポリフォニーを巧みにピアノで再現している。元のスコアの「眺め」と比べてこの編曲の譜面(ふづら)はかなりすっきりしているが、実際の鳴り響きは不足感を微塵も起こさせない。

のみならず、ごく自然なピアノ音楽に仕上がっているところがすごい。もちろん、そのための工夫を編曲者は随所で行っている。たとえば、上の動画の第4楽章冒頭数小節をごらん(お聴き)いただきたい(58’12”から)。原曲は弦楽器で奏でられる箇所だが、スコアの音をそのままピアノに置き換えるだけでは、ここは何ともしまらないことになってしまう。というのも、ピアノは「打楽器」なので一度出した音は減衰するしかなく、弦楽器のように長く延ばす音は出せないからだ。そこで、この編曲者は動画の楽譜に示されているような処理を施すわけだが、うまいものである。

さらにいえば、上の動画は編曲者イアン・ファーリントン(https://www.iainfarrington.com/)自身による演奏だが、これがまたすばらしい(もっとも、よく聴くと、なんだか自動演奏ピアノを用いているように聞こえなくもない。が、仮にそうだとしてもその音楽づくりはきちんとしている。なお、同氏のピアニストとしての能力の高さは次のものからわかる:https://www.youtube.com/watch?v=VcYFns8nito&list=RDVcYFns8nito&start_radio=1)。この人はマーラーの交響曲を第8と《大地の歌》を除いてすべて編曲し演奏しているが、(つまみ食い式に聴いた限りでは)そのどれも見事だ(それらはすべてYouTubeで公開されているし、楽譜も出版されている(https://www.ariaeditions.org/store/c3/Piano_solo.html))。

 

今日は81回目の終戦の日。やはりいろいろなことを考えさせられる日である。