今やほとんど演奏会に出かけることのなくなった私だが、先週は珍しくも2日連続で。今日話題にするのはその1つめについてである。それは何かといえば、京都市立芸術大学現代音楽研究会club MoCoの第4回定期演奏会だ(https://club-moco-kcua.com/20240825-2)。
今年生誕100年を迎えたピエール・ブゥレーズに因む選曲で、演目は次の通り:
イーゴリ・ストラヴィンスキー 《七重奏曲》(1952-1953)
アルバン・ベルク 《室内協奏曲》(1923-1925)
ピエール・ブーレーズ 《デリーヴ1》 (1984)
フィリップ・マヌリ 《ある自画像のための断章》(1998)
選曲のコンセプトなどについては上記リンク先をご覧いただきたいが、まことに充実したプログラムである。
実は私のお目当てはブゥレーズではなく、このところすっかりハマっているベルク作品。これが実演で聴ける貴重な機会を逃す手はない。そして、演奏はその期待に十分に応えてくれるものだった。独奏ヴァイオリンの豊嶋泰嗣は実に見事だったし、独奏ピアノの二俣菜月も好演だった。そして、共演の管楽アンサンブル、そして全体をまとめる指揮の森脇涼もまた。欲を言えば、もう少し「妖しい」響きがしてもよかったと思うし、「このパートがもう少しよく聞こえればなあ」と感じる箇所もないではなかった。が、彼らの演奏はこの名曲の魅力を十分に味わわせてくれるものだった(ストラヴィンスキーの作品も同様。ただ、それを聴きながら、「もしかしたら、このホールは楽器間の音量バランスを取るのが些か難しいホールなのかもなあ」と感じもした)。
今回取り上げられたブゥレーズ作品は1984年の作で、私は元々、1970年代以降の彼の作品をさほど好んではいなかった。が、少し前に録音をいろいろと聴き直してみたところ、以前とは感じ方が変わってきたようで、それなりに楽しく聴けるようになっていたので、今回は果たしてどうなることかと期待半分、不安半分。幸い、演奏のよさもあってか、作品の響きの美しさのみならず、音楽のドラマもそれなりに楽しめたのは幸いである。やはりブゥレーズは一流の作曲家だということなのであろう。
最後のマヌリ作品だが、これは残念ながらあまり楽しめなかった。それには私個人の聴き手としての資質も少なからず関わっていよう。すなわち、私の耳は大音量や刺激的な音が長時間続けられることへの耐性があまりないのだが、今回のマヌリ作品はまさに私の耳の限界を超えるものだったのである(ドームでのライヴの「爆音」を楽しめる人ならば、また違った聞こえ方がしたかもしれない。他の人の感想を聞いてみたいものだ)。それゆえ、ここでこの作品や演奏についてあれこれ述べるのは止めておきたい(ただ、音楽の構成が――40分ほどの演奏時間も相俟って――かなり冗長に聞こえたことだけは言っておこう)。
ともあれ、演奏会としては実に聴き応えのあるものであり、このような会を実現させた演奏者及び関係者の方々へは「よくぞやってくださいました!」と感謝の言葉しかない。とともに、先立つ3回を聴き逃したことが悔やまれる。次回の第5回が今から楽しみでならない。