先週出かけた演奏会の2つめは「Palette Concert Series〜たおやかなる和の調べ〜」(於:原田の森ギャラリー(神戸市)別館401号室:https://www.kobe-bunka.jp/c/music/18786799/)。
これは出演者の1人、青山理紗子さん(私の授業のかつての受講生)からご案内いただいたものなのだが、実に楽しかった。
演目は次の通り:
前半
武満 徹:小さな空/『他人の顔』より ワルツ ①②
連 一矢:3つの小品 ②
湯山 昭:『お菓子の世界』より バウムクーヘン ②
湯山 昭:歌曲集『カレンダー』 ①②
後半
平井 康三郎:幻想曲『さくらさくら』 ③
大澤 壽人:富士山 ②
八村 義夫:ピアノのための即興曲 ②
伊福部昭:ピアノ組曲 ③
演奏者:①野尻 友美(歌)、②青山 理紗子(ピアノ)、③藪内 弥侑(ピアノ)
硬軟取り混ぜた、しかも、巧みに配列された選曲であり、楽しいだけではなく、聴き応えも十分で、「ああ、よいものを聴かせたもらったな」としみじみ感じた次第。「邦人作品」を集めた演奏会となると、妙に気張った選曲か、逆に親しみやすそうな作品だけで固められた気の抜けたようなものが目に付くのだが、この演奏会はそうではない。気張ってはいないが十分に気が遣われた、すてきな演奏会だった。
前半の演目はいわば「おしゃれ系」である。最初の演目「小さな空」はその幕開けとして巧みな選曲である。続く連作品はジャズなどに取材したものであり、湯山作品はフランス近代の流儀によるもの。いずれもとっつきやすいものだが、決してeasyではなく、充実した音の世界を繰り広げていた。
後半は「和の調べ」ということ強く感じさせる作品が集められており、それぞれに味わいのあるものだった。面白いのは、いかにも日本的な、しかもどちらかといえば穏健な作品の中に1つだけ八村義夫の前衛的な作品が含まれていたことだ。この曲を選んだ青山さんは演奏に先立って、同曲に感じられる「和」の要素を説明していたのだが、それを聞いて。「なるほど」と思い、さらに演奏を聴くと「ごもっとも」と思わされた。そして、この八村作品が続く伊福部作品をいっそう効果的なものにしているように感じられたのである。
演奏はいずれも自分が選んだ作品への愛に満ちたものであり、聴いていて気持ちがよかった。また、先の八村作品のみならず、他のすべての作品について演奏者による、ありきたりではない、自分の言葉できちんと音楽について述べたトークがあり、それもこの演奏会の重要な構成要素であったと思う。
ともあれ、いろいろな意味で楽しい演奏会で、とても幸せな気分になれた。演奏者(=企画立案・実行者)の方々に心からの御礼を。