2025年10月10日金曜日

『心中天の網島』を観に

 昨日は『心中天の網島』の「北新地河庄の段」「天満紙屋内の段」「大和屋の段」「道行名残の橋づくし」を観る(聴き)に妻とともに国立文楽劇場へ(https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/bunraku/2025/7/)。まだまだ初心者なので表面的なところしかわからなかったにしても、やはり楽しかった。「心中もの」ではあるが、主人公の紙屋治兵衛のあまりの「クズ」ぶりにはただただあきれ果てるばかり(予習して知ってはいたものの……)。むしろ、彼の妻や心中の相手が不憫でならなかった。もちろん、作者はある意図の下にこうした筋書きにしたのだろうが、当時の観客はこれをどう観たのだろうか?

私にはまだ演者ごとの芸風の違いはわからないが、それでも「北新地河庄の段」の後半で太棹が最初の一音を奏でたとき、身震いさせられた。後から確認したところ演奏者は人間国宝の鶴澤清治だったのだが、私のような初心者にさえ何かを即座に感じさせるというのは、やはり芸の力というものだろうか。それをもっと深く味わえるようになりたいものだ。というわけで、これからも折に触れ文楽を観に行きたい。