『レコード芸術』誌が休刊(=廃刊)になるとは聞いていたが、まあ、仕方がなかろう(私も今世紀に入ってから、この雑誌をほとんど読んだことがない)。昔々、『音楽芸術』がやはり休刊に決まったときには「存続を求める署名」を(まだ若くてナイーヴだった)私もしたが、今回はしなかった。こうした情報メディアの存在意義はまだ失われていないとは私も思うが、全く異なる形態でゼロから再出発した方がよいと考えるからだ。
その場合、「書き手→読み手」の一方通行ではなく、双方向で意見のやり取りができ、「公論」(と言うと大げさかもしれないが……)の形成に(匿名ではなく実名で)読み手も参加できるかたちにした方がよかろう。ウェブ媒体ならばそれも可能なはずだし、そうした形態はクラシック音楽界の活性化にわずかではあっても貢献できるものになるのではないか。
その運営は必ずしも出版社である必要はなかろう。それこそ、比較的リッチな私大がやってみても悪くないと思う(残念ながら、今や国公立大学にその余裕はないだろう)。しかも、音楽の学部・学科を持つ大学よりも、むしろメディアの扱いを研究し、種々の実践を行っている大学の方がよかろう。「応用音楽(芸術)学」や「応用社会学」の1つの実験として年期を区切ってこの事業に挑戦する大学はないだろうか?