先ほどラジオをつけたら、何とも妙なる合唱の調べが聞こえてきた。現代の感覚からすれば何とも古式ゆかしき音調なのだが、さりとて本当に大昔の音楽だというわけでもない。「いったい誰の曲かなあ」と思いながら聴いていたら、演奏が終わり、作曲者と曲名が告げられた。それはモートン・ローリゼン(Morten Lauridsen, 1943-)の《薔薇の歌 Les Chansons des Roses》(1993)というものだった(ラジオとは異なる音源だが参考までに:https://www.youtube.com/watch?v=4O5wuizenu8)。
私にとっては全く未知の作曲家と音楽だったが、NHK-FMの「ビバ! 合唱」という番組の今回の題名には「現代の人気作曲家」とある(https://www.nhk.jp/p/viva/rs/8P466QK189/episode/re/4VRWZXV6XG/)。この「人気」というのは合唱の世界でのことなのだろうが、他の作品も聴いてみると、なるほどそうした人気も十分頷ける。のみならず、自分も合唱に加わって歌ってみたら楽しいだろうなあと思った。
ところで、ふと気になって、Oxford Music Onlineで調べてみると項目があった(米国の作曲家なのだが名前の綴りからすれば北欧がルーツの人に思われたが、果たしてデンマーク系だった。なお、Morten Lauridsenという名はデンマーク語の発音では「モーデン・ラウリトスン」(赤字が強勢)となるそうだ(https://www.sfs.osaka-u.ac.jp/user/danish/dictionary/det_hele.pdf)が、もちろん、米国の生まれ育ちなので英語読みすべきだろう)。しかし、それはこれほどの大きな辞典だからこそであって、タラスキンの浩瀚な音楽史本の20世紀後半の巻にもThe Cambridge History of Twentieth-Century Musicにもローリゼンの名は出てこない。まあ、これは仕方がないことではある。音楽の世界もまた広いということであり、そのすべてを1冊の本でカヴァーできるはずもないからだ。とはいえ、そうした「世界の広さ」に対して、1人の人が自分で「これが音楽だ」と思っている世界の「狭さ」は忘れるべきではなかろう。
さて、上記ローリゼンの音楽はとてもよい感じだったので、件の番組は最後まで聴いてしまった。ところが、その後の番組「現代の音楽」(以前は長らく聴いていなかったのだが、最近はなるべく聴くようにしている)は残念ながらさに非ず。今回は「笙アンサンブル」の演奏会が取り上げられており、「これは面白そうだ」と思って聴きはじめたら、最初の作品があまりに馬鹿げたものだった(笙にわざわざ奏でさせるような類の音楽ではなかった)のでラジオのスイッチを切ってしまったのである。これは私の音楽世界の「狭さ」のゆえであろうが、決してそれだけではないとも思う。