先日、ピアニストの辻井伸行氏が日本人ピアニストとしてははじめてドイツ・グラモフォンと専属契約を結んだというニューズに接した。まことに喜ばしいことである。今後の海外でのさらなる活躍を祈りたい。
とともに、私はもう1つ、別な関心を抱いている。辻井氏の演奏は典型的な「日本語的演奏」なのだが*、そうしたものが西洋芸術音楽の本場で(すでに活動している氏が)これまで以上に受け入れられていくことになるのか、あるいは、もしかしたらいずれ拒絶されることになるのかが大いに気になるのだ。もちろん、前者であって欲しいし、それは西洋芸術音楽にとっても長い目で見ればプラスになると思うのだが……。
*「日本語的演奏」については次を参照:https://www.jstage.jst.go.jp/article/daion/62/0/62_58/_article/-char/ja。また、その例として、辻井氏が弾くラフマニノフの第3協奏曲のある箇所(次の動画の4’20”以降:https://www.youtube.com/watch?v=VlsxkBSMO14)を、そして、比較対象として作曲者自身の演奏で同じ箇所(次の動画の4’03以降:https://www.youtube.com/watch?v=UKziGGumuEk)をあげておこう。これはどちらが「正しい」とか「正しくない」とか、あるいは、「よい」とか「悪い」とかいうことなのではなく、端的に異なっている。