2023年3月31日金曜日

「邦楽」という呼称

  海外のポピュラー音楽のことを「洋楽」というのに対して日本のそれのことを「邦楽」というのはご存じの通り。だが、私は長らくこの呼称に抵抗感があった。つまり、自分にとって「邦楽」というのは日本の伝統音楽のことであって、いくら国産だからといって西洋音楽ベースの音楽のことをそう呼ぶのはいかがなものか、とずっと思っていたのである。

が、あるときからそうした抵抗感はきれいさっぱりなくなった。というのも、日本でなされている西洋音楽は大なり小なり「日本化」されたものであって、ならばそれを「邦楽」と呼ぶのは至極当然のことだと得心したからだ。

そして、それとともに「日本人なのに自国の伝統音楽を知らないのは恥ずかしいことだ」とも感じなくなった。もちろん、中には興味が持てるものもあり、自分なりに楽しんではいる(たとえば、この4月にも文楽を観に行く予定がある)が、もはやそれを体系的にお勉強したいとも、そうしなければならないとも思わない。「日本」は自分が今行っている音楽の中に十分にあり、その正体を探る方が先決である(その過程で必要に応じて伝統邦楽や民謡などをお勉強することにはなろうが)。