このところなぜかアルバン・ベルクの音楽に心惹かれている。今日も《ルル組曲》をスコアを眺めつつ聴いたが、ふと、そこに武満徹の音楽がダブって見えた。そういえば、彼はベルクをかなり好んでいたとのことだが、今更ながら「なるほど」と納得した次第。
武満作品のうち、とりわけ80年代以降のものに「ベルク色」がかなり濃く感じられる。もちろん、それはたんなる真似ではなく、武満独自の表現になっている。もっとも、それが私はどうしても好きになれない(それ以前の武満作品は愛聴している)。お手本のベルク作品は心穏やかに聴けるのに……。
が、このベルクとて以前はそうではなかった。ということは、もしかしたら、いずれ80年代以降の武満作品も楽しめるときがやってくるのかもしれない(が、ベルクの音楽は対位法によって立体的であるのに対し、武満の音楽には対位法はほとんどなく平面的――これは「欠点」ではなく、「持ち味」――である。表面の響きが似ているところがあるにしても、音楽の実質は随分異なっているわけだ)。