2021年10月11日月曜日

イタリア語歌唱の優れた手引き書

 前から気になっていた次の書にようやく目を通すことができた。それは森田学『イタリア語で歌いましょう――歌唱表現を豊かにする発音・発声入門』(ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス、2019年)である。記述は懇切丁寧でとてもわかりやすく、初学者にとって必要なことはすべて書かれている良著だと思う(ただ、‘l’の発音について「舌の先を上歯茎に当て(舌の両サイドに息の出口がある)、舌先を離す際に出る有声音」(同書、p. 24)と説明されているが、この「舌先を離す」というのは正しいのだろうか?)。これからイタリア語の歌を学ぼうという人にはもちろん、イタリア語の歌の伴奏をする人にも迷わず同書を薦めたい。いや、それ以前に自分で同書を手引きにイタリア歌曲を練習してみたい(時間ができれば……)。 

 ところで、諸外国語のリズム、イントネーション、プロソディなどの特性を踏まえて器楽曲の演奏法を具体的な作品に即して解説した書があれば学習者のみならず、音楽愛好家にとっても益するところ大だろう。誰か書いてくれないものか。 

 

イタリア歌曲を今の自分が歌うならば、やはり古典からである。昔々、「カタカナ発音」で済ませてしまったものをきちんとやり直してみたい。 カッチーニの〈アマリッリ、わが麗しの〉を手始めに。かつてはロマン派風に潤色したパリゾッティ版(日本で『イタリア古典歌曲集』として出ていたもので、教育学部音楽科の受験生必修の曲集)を用いていたが、今度は化粧を落とした版を使ってみようか。そして、全く時代も傾向も異なるが、トスティも!