2021年10月13日水曜日

My prince has come.

昔々ラジオで耳にした佐藤允彦(1941-)が弾く《いつか王子様が》に大感激したことを、以前、ここで話題にした。エアチェックのカセット・テープをうっかり処分してしまって以来、「何とかもう一度聴けないものか」とずっと思っていたが、何と、その願いが叶ったのである。

昨日、ふと思い立ってYouTubeで検索したところ、その番組の録音がアップされているではないか! もちろん、すぐに聴いた。いや、やはりすばらしい(次の動画の32’ 10”から:https://www.youtube.com/watch?v=zvlI2Sw3eFg)。あの名チューンから何ともスリリングなドラマが展開されるさまには今聴いてもただただ驚くばかり。クライマックスに到る件には大興奮だ(35’ 27”以降)。

その放送の中で前年にリリースされた《いつか王子様が》を含むアルバム『Brink』のことが話題にされていたので、私は迷わず購った(その頃の私にとって、1枚のレコードを購うのには一大決心が必要であったにもかかわらず)。こちらはトリオの演奏なのでソロとは些か趣きが異なるが、こちらはこちらでもまことに魅力的。とりわけタイトル曲の〈Brink〉には痺れた(これもLP盤だったので長らく聴けなかったが、中古CDを入手できて感動を新たにできたのは幸いだった)。そして、「ああ、何とジャズとはよいものか」と当時思ったものである。

にもかかわらず、その後、ジャズに深入りはしなかった。なぜか? 私は当時、重度の「現代音楽病」で、そちらにどんどんのめり込んでいっていたからである。また、気力、時間、そして何よりも金銭面で「二兎を追う」のは無理だとわかっていたからでもある。だが、それから月日は流れ、ジャズを自分のペースで楽しめるようになった。きっかけはマイルズ・デイヴィスで、そこから少しずつ、本当に自分が聴きたいものだけを聴いてきた。そして、そろそろ佐藤允彦の音楽に「深入り」する時がやってきたのかもしれない。

ところで、その佐藤だが、未だに現役で、すごいプレイを飄々とこなしている(https://www.youtube.com/watch?v=diwwWrdkHyc)。1ファンとしてはうれしい限りだ。