このところ朝の空き時間に読み耽っているのが山﨑努『俳優のノート』(文春文庫、2013年。初出単行本は2000年)だ。これは著者が1998年に新国立劇場で上演された『リア王』で王を演じた際、その準備から上演に至るまでの期間にとられたノートに基づく本である。私には演劇を劇場で観る習慣はなく(興味はないではないが、それに割ける時間もお金もない)、斯界のことはほとんど何も知らないが、だからこそ同書は私にとっていわば「未知との遭遇」であり、まことに面白い。
だが、面白さの理由はそれだけではない。演劇と同じく音楽もperforming artの1つであり、西洋芸術音楽の場合、他者の「作品」を取り上げる場合がほとんどだから、同書を読みながらいろいろなことを考えさせられるのだ。「台本(&演出家)と俳優の関係は楽譜(&指揮者)と演奏家の関係とある面ではパラレルだが、ある面では必ずしもそうではない。では、どこがどんなふうに?」――などなど、ときには読書から離れて考え込んでしまう。が、それがまた楽しい(いずれ機会を改めて、気になった箇所を抜き出してそれにコメントを付けてみたいと思っている)。ともあれ、同書は(アマチュアも含む)音楽に関わる者にとっても有益なものであろう。