昨日、手持ちのDVDでバーンスタインが指揮する《ペトルーシュカ》を随分久しぶりに聴いた(観た)が、これがまことにすばらしかった(https://www.youtube.com/watch?v=kvhmyMhZX2E)。物語、そして、登場人物の動きが生き生きと描き出されているとともに、音楽上の「仕掛け」もよくわかるからだ。こうした演奏に触れるとブゥレーズ指揮の同曲の演奏(1回目の録音)は私にとっては「静物画」(仏語ではNature morteと言われるが、これを直訳すれば「死んだ自然」となる)に見えて(聞こえて)しまう。そのブゥレーズ盤が余人には及ばない精密さで音楽のつくりを示したものであり、これはこれで勉強にはなるのは確かだ(し、私も長らく聴いてきた)が……(なお、バーンスタインは改訂版、ブゥレーズは初版を用いているが、作曲者自身は2つの版は別物だと述べており、それぞれに違った面白さがある。そして、私はどちらかといえば改訂版の方を好んでいる)。
武満徹の音楽は西洋の音楽と比べればまことに「静的」である。それゆえに、それを無理に「動」かして劇的にしようとすると、どこか妙な具合になってしまう。そして、その点で西洋人にとっては武満作品の演奏は実のところなかなかの難物なのではなかろうか(ニューヨーク・フィルの委嘱作《ノヴェンバー・ステップス》の初演で音楽監督だったバーンスタインが指揮をせず、小澤征爾に任せたのも、1つにはこれが理由だったのかもしれない。バーンスタインの音楽づくりは実に動的なので)――とはいえ、だからこそ逆に、普通の日本人演奏家にはない視点からの演奏が可能であり、そのことが作品世界を広げることにも繋がるだろう。
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