2021年9月20日月曜日

うれしい近刊予告

  プロコフィエフ作品の出版に力を入れている全音楽譜出版社だが、またしてもうれしい近刊予告が。それはバレエ音楽《シンデレラ》から編まれたピアノ組曲、作品97102のものだ(https://shop.zen-on.co.jp/item_search/search/coming_soon:1)。旧ソ連の版(とそのライセンス版たるB&H版)で入手可能ではあったが、全音からいつか出るだろうとずっと待っていたのである。いや、待った甲斐があったというものだ。かくなる上は、ピアノのための3つの《シンデレラ》組曲のうちの残る作品95だけではなく、その他の小品や管弦楽曲も同社がいつか出版してくれることを1人のプロコフィエフ・ファンとして大いに期待したい。

 

 ……と書いていて、ふと思い出したことがある。中学生の頃、学校の図書室にあった『N響名曲事典』(平凡社、1958-9年)という曲目解説本を愛読しており、その中にプロコフィエフの作品の解説もあったが、1つ、強烈な印象を残したものがあった。それはオラトリオ《平和の守り》作品124(1950)で、要は壮大なスターリン讃歌なのである(https://www.youtube.com/watch?v=mihwIOSlJ4Y。ちなみに、ショスタコーヴィチの《森の歌》はその前年の1949年の作)。歌詞の説明もあったが、読んでいてむずむずするような内容だった。とともに、作曲者の苦労のほどが偲ばれもした。なぜ、そう思ったかといえば、当時、ソルジェニーツィンの『収容所群島』を同じ図書室で借りてすでに読んでいたからだ。

 その『N響名曲事典』に収められていたのは演奏会の曲目解説であり、ということはつまり、《平和の守り》をかつてN響が演奏したということになる(それがいつのことだったかは『事典』を調べればわかるのだろうが、手元にはないので確かめようがない。大学の図書館にあるようなので、今度調べてみよう)。今ならばまず取り上げられることのない作品であろうが、当時は天下のN響が演奏しても不思議ではない世情だったわけだろう。

 純粋に音楽として聴けば、他のプロコフィエフの作品同様、この《平和の守り》もまた見事な職人芸の賜物だといえる(ショスタコーヴィチの《森の歌》と同じく)。彼は厳しい条件の中で最善を尽くしたのであって、決して手抜きなどしていない。が、歌詞がこれでは今となってはさすがに普通の演奏会で取り上げることは難しかろう。もっとも、《森の歌》と並べてレクチャー・コンサートのネタにするという手はあるかもしれない。