バルトークは私にとってはなかなかに難しいところがある人で、嫌いではないのだが手放しに好きだというわけでもなく、興味はあるものの近づきがたいところがあるのだ。が、先日、わりあい早い時期のピアノ曲を聴いていたとき、ぐっと引き込まれてしまった。とりわけ、その何とも繊細な響きに魅せられる。もしかしたら、私がそこで感じている魅力は、世のバルトーク・ファンが感じているものとはどこかが違っているのかもしれない。が、そうした間口の広さこそ、彼が真に偉大な作曲家である証であろうか。
「作曲家バルトーク」に負けず劣らず気になるのが「ピアニスト・バルトーク」だ。残された録音は数少ないのだが、そのどれもがすばらしい。それが事前に準備したものを披露するようなものではなく、まさにその場で音楽が生まれてきたかのようなものなのだ。ああ、彼はなぜもっと多くの録音しておいてくれなかったのだろう。残念至極。