2020年4月2日木曜日

ブゾーニ編のバッハ

 昨日話題にしたブゾーニだが、今やその作品は次第に演奏される機会が(わずかずつであるとはいえ)増えつつあるようだ。純然たるオリジナル作品はもちろん、種々の編曲作品もまたそうだ(もっとも、ブゾーニの場合、両者の境界が曖昧で、両者が渾然一体となっているものも少なくない。そして、そこが面白い)。
近年、何人かが録音で取り上げているものの1つに《ゴルトベルク変奏曲》の編曲がある。これがまた何とも面妖な(もちろん、褒め言葉!)な編曲で、細部をピアノ向けに効果的に書き換えてあるだけではなく、変奏の数も削り、最後のダ・カーポのアリアなどはほとんど別物にしているのだ(https://www.youtube.com/watch?v=IVDOEL4D_mQ)。
こうした編曲を「邪道」だととるか、それとも「一種の追創造」だととるかは人によって判断の分かれるところだろう。が、昔ならばこうしたものが録音されることなどまずありえなかった。つまり、最初から問題外だとされていたわけで、その点、今はとにかく俎上に載せられるようにはなったのである。
さて、このブゾーニ編《ゴルトベルク》を取り上げるだけの度量の広さがピアニストにあるのならば、さらに是非とも挑戦してもらいたいものがある。それは《平均律クラヴィーア曲集》だ。こちらは《ゴルトベルク》のように大胆なことがされてはいないが、それでもピアノ音楽としての立派な化粧直しが施されている(中には華麗に編曲されたものや作曲上の関心から手を加えられたものが「付録」や「註」のかたちで含まれている)。これを楽譜通りに演奏すればまことに面白いことになるはずだ。