ショパンは自分の同業者に対してなかなか辛辣だった。メンデルスゾーン、シューマン、リストなど今日「ロマン派の巨匠」とされる作曲家たちについて、けっこう酷いことを言っている。
そんなショパンが評価したのが、たとえば(今や「マイナー作曲家」の地位を脱した)アルカンであり、フェルディナント・ヒラーらであった。そして、もう一人、今日「発掘」 されつつあるナポレオン・アンリ・ルベル(1807-80)のこともショパンは絶賛している(ショパンが自身のピアノ・メソッドの草稿を託したのは、このルベルとアルカンであった)。
ルベルの名は近年までは作曲家としてよりも、むしろ理論家として知られていた。すなわち、有名な「デュボワの和声学」が出る前にフランスで広く用いられていたのが、このルベルの和声学だったのである。だが、今やいろいろと聴くことのできる作品からわかるのは、この人はさすがショパンが絶賛するだけの力量を持った作曲家だった、ということだ。
たとえば、そのルベルの交響曲第4番:https://www.youtube.com/watch?v=etzw8qhCu8Y
これはロマン派時代の人にしては響きが些か古典的だと感じられよう。が、ショパンの好み――ロマン派が嫌いで(だから、大方の同業者への点が辛かったわけだが)、むしろ古典派やポスト古典派、そしてバッハを愛した――にはまさにしっくりくる音楽だと言えよう。そして、こうした作品を聴くことは、ショパンのより深い理解にも繋がるはずだ。