考えてみれば、人間の音楽もそのようなものかもしれない。音楽にはいろいろな種類のものがあり、様式もさまざまだ。それゆえ、ある音楽の様式に馴染んでいない者にとって、その音楽がいわんとしていることを大なり小なり(場合によってはほとんど)聞き落としてしまうことになる。また、お馴染みの様式の音楽であっても、聴く人の感覚や能力の違いによっても、やはり同じようなことが起こる。人々がたとえ同じ場で同じ音楽を聴いていたとしても、各人が聞き取っている音の像は異なるのだ。が、それはそれとして、各人は自分なりに聴いている音楽を楽しみ、味わっている。