2020年4月15日水曜日

演奏会の別のかたち

 普通の商業的な演奏会というのは、多少乱暴に言えば、演奏家の1回限りの演奏という「商品」を聴き手という「消費者」が購入・消費する場である。それは本質的には書店で売られている書籍を本の読み手が購うことと変わりはない。
私は何もそれが悪いとかおかしいとか言いたいのではない。が、そうしたものとは違った関係や場が演奏家と聴き手の間にあってもよいのではないか、とは思う。すなわち、1つの演奏会を企画段階から演奏家と聴き手がたんなる「商品の提供者/購入者」という関係を超えて共同でつくりあげるようなものがそれだ。この場合、演奏会の規模は小さなサークル程度のものとなろうし、利益を出すどころか、それこそ赤字にならず、演奏家に多少の報酬が出れば御の字だろう。
だが、こうした形態の演奏会ならば、演奏家は自分が取り上げたい作品をもっと積極的に取り上げられるし、聴き手も自分が本当に望む作品を聴くことができる。のみならず、両者の対話によってその結果を次回に容易にフィードバックできるだろう。このような演奏会は世間の一般的な価値観や評価などを気にする必要はなくなる。肝心なのは当事者たちの「満足」感なのだから。
ともあれ、こうした場があちこちにできて(なんと言っても演奏家の数は多いだから……)、情報のネットワークがつくられれば、なかなか面白いことになるのではないだろうか。そして、私個人としては、お金と時間と手間暇をかけて立派な演奏会をつくることに関わるよりも(まあ、そんな機会はないだろうが……)、断然、こうした身軽な演奏の場にあれこれ一人の「聴き手」として関わることに興味がある。