2020年6月16日火曜日

武満作品に聴かれる日本語の響き?

 少年時代、武満徹の《弦楽のためのレクイエム》(1957)の音像を私の頭に入れる際にお世話になった音源は若杉弘指揮、読売日本交響楽団の演奏で、1966年の録音である。私にとってはこれが基準になってしまい、他の演奏を聴くときもつい比較してしまう。そのためだろうか、とりわけ近年の演奏が自分にはなかなかしっくりこない。
 1つの理由として考えられるのが、時代の変化である。なんと言ってももはや60年以上前の作品だ。とらえられ方が昔と今とでは異なっていても不思議はあるまい。だが、それ以上に大きな理由として考えられるのが演奏者の「言語」の違いだ。昔と違い、今やこの作品は世界でそれなりに演奏されている。そして、外国人による演奏と若杉=読響の演奏を聴き比べてみると、一音一音がしっかりと密に(見方を変えれば、のっぺりと)奏でられる後者の演奏がまさに日本語の発音を反映しているように聞こえるのに対して、前者の演奏からはそれとは明らかに違う「言語」の響きが感じられるのだ(こうしたものも聴き込めば馴染めと思うので、いずれ試みてみたい)。
 もっとも、日本人の演奏でも近年のものは昔のものとまた違っており、もしかしたら外国人の演奏に近づいているかもしれない。これは調べてみたら面白かろう。