1990年代以降、「現代音楽」の世界で定番となった「換骨奪胎」的パラフレーズ作品のネタとして、このシューマンの変奏曲は面白いのではないだろうか? きちんと仕上げられた作品というよりも、どこか未完成の趣があって「開かれている」感じがすればこそ、この変奏曲には作曲家が想像・創造力を働かせる余地がかなりあるはずだ(いっそのこと自分で書いてみようかなあ。《ある変奏曲の変容》とか題して)。
晩年のシューマンの作品もなかなか評価が大きく分かれているようで、 それを大いに好む人がいる一方、ほとんど認めない人もいるようだ(クララ・シューマンは後者に属する)。私にとっては晩年のシューマンの音楽「も」好ましく、《子供のための3つのソナタ》や《暁の歌》などは名曲だと思う。
シューマンの評論の邦訳としては岩波文庫の吉田秀和訳のものがあるが、これは抄訳ななので、必要な註釈をつけた全訳をその道の専門家がやってくれないだろうか。たぶん、それなり読まれるはずである。