もちろん、作曲家がそのように「難しく」書くことにはそれなりの必然性はあろうし、何でもかんでも「簡明に」書けばよいというものでもなかろう。が、だからといって、ブラッハーが言うようなことを無視してよいというわけではあるまい。そこで作曲家は次のような点にもっと留意したらどうだろう:
(1)響きのありようや効果が似たようなものならば、できるだけ読譜と演奏が容易な書 き方をした方がよい。
(2)聴き手がほとんど認知できないような細かい音の動きで演奏が至難なもの(つま り、効果が低いもの)を書くべきではない(ただし、「演奏至難」という点につい ては自分で演奏できるのならばその限りではない)。
また、こうした観点から過去の「現代音楽」の「名作」を再点検することで、現在の作曲家は自身の創作に活かせることがいろいろと見つかるのではないだろうか。