オリヴィエ・メシアン(1908-92)はたぶん、20世紀の「現代音楽」の作曲家のうちで後世にも作品が「生き残る」数少ない者の一人であろう(なお、私はそうではない作曲家のことを悪く言っているのではない。これまでも大多数の作曲家は「生きているうちが花」で、死後は忘れ去られるのが普通だったのだから。金澤攝さんの調査・研究が教えてくれるように、私たちが今日「音楽史」の中で知っている作曲家は当時活躍した者の中のほんのごく一部に過ぎない。メシアンの弟子でもっとも高名なピエール・ブゥレーズでさえ、100年後にどれだけの作品がレパートリーとして残っているだろうか?)。《トゥランガリーラ交響曲》あたりまでの作品はもちろん、それ以後ものでも、一部の過激な実験作を除き、いろいろと演奏され、聴かれ続けることだろう。
私もメシアンの作品を好んでいるが、すべてではない。まず、あまりに宗教色の濃いものには些かついていけないところがあるし、一連の「鳥」絡みの作品にも好きなもの(《異国の鳥たち》などは大好きだ。以前、これを実演で聴くことができたのは幸いだった)もあれば、そうではないものもある。また、好きな作品であっても、こちらの気力・体力が充実しているときでないと尻込みしてしまう。音楽が発する力があまりに強力だからだ。が、こちらに準備さえできていれば、その力はまことに好ましい。
今後、実演で未聴の作品に触れる機会があるとすれば、是非とも聴いてみたいのが《峡谷から星たちへ》(1971-74)だ。たぶん、《トゥランガリーラ交響曲》を実演で聴いたとき以上の感動が味わえるに違いない。
今日メシアンを話題にしたのは、ちょうど次のものを読んでいるからだ:P. ヒル、N. シメオネ『伝記オリヴィエ・メシアン――音楽に生きた信仰者』(藤田茂・訳、音楽之友社、2020年)。これは丹念な調査と研究に基づく労作であり、翻訳もまことに読みやすい(ただ、指揮者のロスバウトが「ロボー」とフランス語読みされていたのには何か理由があるのだろうか?)。メシアン・ファン必読の書であろう(上下2巻本で些か高価なのが残念なところ。私も大学の図書館で借りてきて読んでいる。もう少し安ければ購ったであろうが、現状では到底手が出ない(涙))。