2021年12月20日月曜日

心が軽くなる音楽

 サン=サーンス生誕100年にあたる今年ももうじき暮れようとしている。だからというわけでもないが、このところ彼の作品をあれこれ楽しんでいる。今日は《ミサ曲》作品4(1855)(手持ちの録音とは異なるものだが:https://www.youtube.com/watch?v=NUwFoghfWnU)を聴いていたが、その何とも清澄な調べにただただ聴き惚れてしまった。今年はいろいろとやっかいなことがあったが、その年の終わりにこうした音楽を聴いていると、心が軽くなるのを感じる。

この作品に限らず、サン=サーンスの音楽は概ね私にそうした効果をもたらしてくれるので、まことに好ましい存在である。他方、聴く者をドラマに引き込み、ともに燃焼させるような音楽、たとえばマーラーの交響曲のようなものをも私は好んでいる。が、たぶん、これから先の自分の好みはサン=サーンスのような音楽の方へと傾いていくだろう。

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芸術(作品)には人やこの世の闇部を映し出し、暴き立てるようなところがある(上記マーラーの交響曲もある面ではその部類に属するものだろう)。そして、それはそれで芸術の1つの重要な役割ではあろう。が、それ以上に大切なのは、この世に生きる者に何かしら光明(というのが大げさならば、「生きる上での力(の1つ)」と言い換えてもよい)をもたらすことだと私は信じている。「信」なので、これを他者に押しつけるつもりはないが、そのうち1つの論として展開してみたいとは思っている。20世紀以降の陰鬱なトーンの芸術論への批判(ただし、だからといってそこで脳天気な楽観論を繰り広げるつもりはない)として。

 私が学に志して勉強をはじめたのが今からちょうど30年前のこと。その間にいろいろなことを学び、考えてきたが、このあたりで一度「新規まき直し」をしようと思っている。現在持っているいくつかの計画を放棄するわけではないが、体勢を立て直し、自分にとっての切実な問題をいっそう明確にし、これからの20年(は生きるつもりなので……)に臨みたい。