クラシック音楽の衰退ぶりは楽譜の価格にも現れているのかもしれない。楽譜屋で輸入版楽譜を見ていると、以前には考えられなかったような高い値段が付けられているのにしばしば驚かされる(もちろん、それは版元が値上げをしたからであり、楽譜屋がわざわざ高値にしているわけではない)。
たとえば、Boosey & Hawkes社から出ている種々のプロコフィエフのポケット・スコアなど、「いったいこれで誰が買うのか!?」というような価格である。国内の楽譜でも外国出版社のライセンス版はやはり高いし、純然たる国内版でも昔に比べればやはり安くはない(物価の上昇率よりも楽譜価格の値上がり率の方がずっと高いはずだ)。それはつまり、さほど需要がないから売れず、ある程度高値を付けないと版元が商売にならないということなのだろう。だが、そうなるとよけいに「売れなく」なるわけで、悪循環に陥っているように見えなくもない。
ただ、これはあくまでも私個人の実感にすぎない。実際のところはどうなのだろう。楽譜の需要と価格の推移は経済学の問題ではあろうが、音楽学でも扱われてしかるべきものだとも思う。きちんと調べたらかなり衝撃的な結果が出るかもしれないが、「現状把握」はイノヴェーションの第一歩である。