2021年1月28日木曜日

海賊版楽譜だった……

 このところ必要があって、アルベニスの《イベリア》を見直している。とにかく、知れば知るほどに面白い曲集だ。

 そこでAmazonで何か新しい楽譜や関連本でも出ていないかと物色したところ、「解釈版」楽譜が見つかった。「試し読み」ができたので、「解釈版」だとわかったのである。ところが、この譜面にはどこか見覚えがある。そこで記憶の糸をたぐり寄せてみると、果たして、Ray Alstonという人が編集したもので、ISMLというフリーの楽譜サイトにあげられているものだった(1例をあげておこう:https://imslp.simssa.ca/files/imglnks/usimg/e/e2/IMSLP590323-PMLP7337-El_Polo_.pdf)。

 このファイルをご覧いただければおわかりのことだと思うが、元のまことに読みにくい楽譜を実に見やすく、かつ、弾きやすく編集した楽譜であり、編者Alston氏の「解釈」は 《イベリア》に取り組む者にとっては有益である(ので、興味のある方は参照されたい:https://imslp.org/wiki/Category:Alston,_Ray)。そのAlston版がAmazonで安価で売られていたものだから、私はすぐに注文した。やはり紙の方が見やすいし、使いやすいからである。

 ところが、驚くべきことに、今日届いた現物を見てみると、どこにも編者の名前が記載されていないのだ。また、編者の解説文も一切載せられていない。ということはつまり、これは「海賊版」だったのだ(まず間違いなく、編者にも何の了解も取っていないだろう)。なるほど編者は善意でインターネット上に楽譜ファイルを公開しているのだろうが、それはこうした商業目的での使用を利用を認めるものではないはずだ(印刷楽譜にはご丁寧に'All rights reserved.'とたわけたことが書かれている)。そうと知っていれば、これは買うべきではなかった(なお、巻末には「Printed in Japan 乱丁、落丁本のお問い合わせはAmazon. co. jp カスタマーサービスへ」とも記されている。ということは、このいかがわしい商売にはAmazonも一枚かんでいるということなのか!?)。このけしからん出版社はMusica Fidelis(この名前自体がブラック・ジョークだ)という。皆様も(ここに限らず、他の同様な怪しげなリプリントを出している出版社には)ご注意を(なお、リプリントをきちんとしたかたちで出している良心的な出版社――たとえば、Dover社――もあることは周知の通り)。

 

 大阪府民としてため息が出るばかり(私はこの人には投票していないので、なおのこと): https://lite-ra.com/2021/01/post-5774.html