2021年1月29日金曜日

聞いたこともないような出版社の安価な複製品には手を出してはいけない

 昨日話題にした海賊版、リプリント版だが、本当に信じがたいようなものが商品として少なからず出回っていることには驚かされる。

 自分もこれまでにいくつかそうした「地雷を踏んで」しまったことがある。たとえば、昔、フレデリック・ニークスのFrédéric Chopin as Man and Musician Amazonで物色したところ、恐ろしく廉価な版があったので、迷わず注文したところ、これがまさに「安物買いの銭失い」だった。届いた現物を見ると、章が変わっても空きスペースなく次の文章が続いているというとんでもないシロモノで、とうてい読めたものではなかった。そこで、仕方なく別の版を頼んだところ、今度は普通に読めるのだが、書誌情報が全く欠けており、出所不明の何とも怪しげなものだった。これに懲りて、この手の安価な複製本は注文しないことにした。

 ……はずなのに、その数年後、同じ轍を踏んでしまう。今度はテオドール・デュボワの『対位法とフーガ概論』のリプリント版がそれなりに安い価格で出ていたので、つい、注文してしまったのだ。これは原本の写真版で、それはよかったのだが、いかんせん、小さい判型に粗雑な印刷をしているものだから、多くの箇所で文字がつぶれて読めなかったのである。このときは「不良品」ということで即座にAmazonに返品した。というわけで、このときは本当に懲りた……のだが、今回、またしても怪しげな版をうっかり購ってしまった(IMSLPで公開されている――場合によっては書き込みさえある――ものをそのまま印刷したいかがわしい楽譜が少なからずAmazonで売られていることは、十分承知していたはずなのに……)。

 つまるところ、聞いたこともないような出版社の安価な複製品には手を出し(たくなるのが私のような可処分所得の少ない者の「現実」だが、そうし)てはいけない、ということである。そんなものを商品として売っている者(そして、それを普通に取り扱っているAmazon)の商業倫理の欠如は大いに非難されるべきだが、そうはいってもまずは「自分の身は自分で守る」しかない。というわけで、皆様はどうか頓馬な私の轍を踏まれませぬように。