ストラヴィンスキーの《春の祭典》には作曲家自身の手になるピアノ4手連弾版があるのは周知の通りで、近年は標準的レパートリーの仲間入りを果たしている(私の少年時代はそうではなかった。録音もほとんどなく、演奏会でもそれほど取り上げられる機会は多くはなかったろう)。管弦楽版とはまた違った魅力があり、ある面ではこの連弾版の方が面白いくらいだから、今日の人気ぶりも当然だと言えよう。
ところが、この「連弾」版は1台のピアノで済ませようとしたために、随所に少なからず弾きにくいところがある。2台ピアノを用いればかなり問題は解消されるので、実際、そのように演奏されることも多い。
が、作曲者が「1台ピアノ」という制約の中であれこれ行った工夫がもたらす効果は2台のピアノで「すっきり」と弾かれることで何かしら失われてしまうところもあろう。もし、初めから「2台ピアノ用」に書くのならば、たぶん、ストラヴィンスキーはもっと違ったかたちにしたのではないだろうか。
そこで、この《春の祭典》の「2台ピアノ用編曲」をつくってみると面白かろう。連弾よりも奏者の自由が増すので、いろいろと工夫ができようし、もっと弾きやすくて効果的なピアノ音楽にできるはずだ。まあ、まだ原曲の著作権が切れていないので公開演奏には用いられないかもしれないが、私的な楽しみや学習用にそうした編曲をしてみるというのは悪くないことだと思う(とりわけ、プロを目指す学生にとっては)。