私にしては珍しく今年はNHKの大河ドラマを見ている。渋沢栄一が主人公ということで興味が生じたからだ。
その劇中に尾高惇忠(1830-1901)が登場する。栄一のいとこで(のちに義理の兄)、明治時代には実業家として成功した人物である。その名は知ってはいた(が、渋沢栄一と近い人だということはすっかり失念していた)。なぜか? 全く同名の作曲家の名にちなんでだ。先頃亡くなった尾高惇忠(1944-2021)は大実業家の曾孫なのである。
さて、その作曲家の方の尾高惇忠だが、実は私はさほど彼の作品を知らない。きちんと聴いたことがあるのは管弦楽のための《イマージュ》(1981)くらいだろうか。そして、持っている楽譜は1つだけで、それも楽曲ではなく和声課題集だ(『和声課題50選』、全音楽譜出版社、2010年)。ところが、昨年、たまたま書店で立ち読みしたピアノ曲集(https://www.zen-on.co.jp/score/sea_sound/)、がまことに面白く、俄にこの人の作品に興味が生じていたところ、今年になって亡くなったことを知ったのである。
もし、彼がまだ元気だったら、もしかしたら曾祖父(渋沢も親類)のご縁で大河ドラマの音楽を担当することになっていたのかもしれない。なお、気になってドラマの主題音楽の指揮者を確かめたら、果たして作曲家・尾高惇忠の弟、尾高忠明(1947-)であった。