2021年3月27日土曜日

メモ(40)

(以下の内容は今はなき旧ブログで話題にしたことである。が、今日、ふと思い出し、もう一度書いてみた)

吉田秀和(1913-2012)の最晩年の著作、『永遠の故郷』(2008-11、集英社)は歌曲を論じつつ、つれづれを綴った珠玉のエッセイ集である。著者が各々の歌曲を本当に慈しんでいるさまが文章からは伝わってきて実によい。また、そうした歌が人生の一齣と結びついているところにも興趣を覚える。

ところが、このシリーズには日本の歌曲は1つも登場しない。これはそもそも吉田には日本歌曲への関心が欠けていたからなのか、それとも、知ってはいても西洋のあれこれの歌曲に匹敵するようなものを見いだせなかったからなのか……。いずれにせよ、ここには日本の西洋音楽受容に関して考えるべき問題が潜んでいるように思われる。