シェーンベルクの《月に憑かれたピエロ》を日本語訳でできないものかとずっと考えている。その試みは随分昔になされたことがあるようだが、残念なことに定着しなかった。《ピエロ》は歌ではないのだから、日本語でやってもそれなりにうまくいくと思うのだが……。
ただし、そうはいっても訳にはいろいろと工夫を凝らさねばなるまい。すなわち、なるべく原文と似た語順にし、アクセントもなるべく一致するようにし、強調される語は似た音のものを選び、場合によっては語の音を優先して多少の原義からの逸脱も辞さない――といった具合である。